教科書 › 第I部 半導体の理論
CHAPTER 10
電力の物理 ── なぜ電圧が効くのか
CMOS回路の動的消費電力は、次の形で表される。
P = α · C · V² · f
αは切り替わる頻度、Cは充放電する静電容量、Vは電源電圧、fはクロック周波数だ。この式で決定的に重要なのは、電圧だけが二乗で効いている点である。
電圧を半分にできれば、消費電力は4分の1になる。周波数を半分にしても電力は半分にしかならない。だから省電力設計では、まず電圧を下げることを考える。
ただし電圧を下げると回路の動作が遅くなるので、周波数も落とさざるを得ない。この両方を負荷に応じて動的に調整するのがDVFS
(動的電圧・周波数制御)で、スマートフォンからサーバまで広く使われている。
「同じ性能なら、遅いコアをたくさん並べたほうが省電力」という結論がここから出る。GPUやNPUが低クロックの演算器を大量に並べるのは、性能のためだけでなく電力のため。
実務での使いどころ
組み込み機器の熱設計で困ったとき、打てる手はこの式の4つの項に対応している。処理を減らす(α)、配線や駆動する回路を減らす(C)、動作電圧を下げる(V)、クロックを落とす(f)。効果が一番大きいのはV、次にf。だが下げられる幅には限界がある。ならば根本的にはαを減らす、つまり無駄な計算をやめるのが最も効く。モデルの軽量化がハード側の努力より効く場面が多いのはこのため。
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