教科書 › 第I部 半導体の理論
CHAPTER 02
不純物を混ぜる ── ドーピング
純粋なシリコンは、実はあまり役に立たない。常温でわずかに電気を通す程度で、制御の幅が狭いからだ。そこで意図的に別の元素を微量だけ混ぜる。これをドーピング
と呼ぶ。
シリコンは価電子を4個持ち、隣の原子と手をつないで結晶を作っている。ここに価電子5個のリンを混ぜると、手をつなぐのに4個使って1個余る。この余った電子は結合に縛られていないので、自由に動ける。電子(negative)が余るので、これをn型半導体という。
逆に価電子3個のホウ素を混ぜると、手が1本足りない。この「電子が入るべき場所が空いている」状態を正孔(ホール)
と呼ぶ。正孔は隣の電子が移動してくることで位置がずれていくため、まるでプラスの電荷を持った粒子が動いているように振る舞う。正孔(positive)が主役なのでp型半導体という。
正孔は実在の粒子ではない。「空席が移動していく」のを、空席そのものが動いていると見なしているだけ。満員電車で人が1人ずつずれると、空きスペースが逆向きに進んでいくのと同じ。
ドーピングの量はごくわずかで、シリコン原子1億個に対して不純物が数個から数千個という水準になる。それだけで導電率が桁違いに変わる。逆に言えば、意図しない不純物が同じ濃度で入り込めば特性が壊れるということでもあり、半導体工場が極端なクリーンルームを必要とする理由がここにある。
用語の整理
キャリア=電荷を運ぶもの。n型では電子、p型では正孔が主役(多数キャリア)になる。両方の型を組み合わせることで、次章のダイオードやトランジスタが作れる。
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