教科書 › 第I部 半導体の理論
CHAPTER 01
物質はなぜ電気を通すのか
電気が流れるとは、電子が動くことである。ならば「電子を持っている物質はすべて電気を通すはずだ」と思えるが、実際には通す物質と通さない物質がある。この差はどこから来るのか。
鍵は、電子が取れるエネルギーの値がとびとびに決まっていることにある。原子が単独であれば電子のエネルギーは離散的な準位を取る。しかし原子が結晶として大量に並ぶと、その準位が少しずつずれて重なり合い、幅を持った帯になる。これをエネルギーバンド
と呼ぶ。
重要なバンドは2つある。電子が詰まっていて動けない価電子帯
と、その上にあって電子が自由に動き回れる伝導帯
だ。そして両者の間には、電子が存在できない隙間がある。これがバンドギャップ
である。
ここが全部の出発点。バンドギャップの大きさだけで、導体・絶縁体・半導体が決まってしまう。
導体(銅やアルミ)は、この2つのバンドが重なっているか隙間がない。電子は常に自由に動けるので、電圧をかければすぐ電流が流れる。
絶縁体(ガラスやゴム)は隙間が5eV以上と大きく、常温で電子がそれを飛び越えることはまずない。だから電気を通さない。
そして半導体は、その中間にある。シリコンのバンドギャップは約1.1eV。これは常温では大半の電子が飛び越えられないが、熱や光や電圧を少し与えれば飛び越えられる、という絶妙な大きさである。「電気を通したり通さなかったりを外から制御できる」という性質は、この中途半端さから生まれている。
なぜシリコンなのか
バンドギャップが手頃なだけでなく、地殻に大量に存在して安く、高純度の単結晶が作りやすく、そして酸化させると極めて優秀な絶縁体(二酸化ケイ素)になる。この最後の性質が決定的だった。同じ材料の表面を酸化させるだけで絶縁層が作れるので、後に出てくるMOSFETの構造が素直に実現できる。
コメント
コメントにはログインが必要です