製造装置メーカーの世界 — ASML・AMAT・TEL・Lamは何を作っているか
チップ製造は「積む・写す・削る・洗う」の反復で、その1動作ずつに専用の機械と専門メーカーがいる。工程と装置の対応を整理したうえで、必要台数の式と開発費の式から「なぜ装置産業は数社に固まるのか」を導き、ASMLのEUV独占が単独ではなく部品メーカーの束として成立している構造まで解説する。
印刷所ではなく、印刷機を作る側の話
チップは彫るのではなく印刷されます。ならば工場(ファウンドリ)は印刷所です。ではその印刷機は誰が作っているのか——これがこの記事の主題です。
普通の産業なら、工場のほうが機械より目立ちます。半導体は逆で、機械のほうが高く、機械のほうが技術の限界を決めています。最先端の露光装置は1台で1億ドルを超え、ジャンボジェット数機分の部品点数を持ち、輸送に専用の貨物便が要る。工場が「どこまで細かく作れるか」は、その年に手に入る装置の性能で頭打ちになります。設計図が先にあっても、それを写せる機械がなければ何も生まれない。 半導体産業の主導権が装置メーカーに集まっているのは、この一点に尽きます。
チェーン全体のどこに誰がいるかは半導体サプライチェーン全体地図で描いたので、ここではその一段だけを拡大します。
ウェハが受けるのは、たった4種類の動作
数百工程と聞くと数百種類の作業がありそうですが、実際に起きているのは4動作の反復です。
- 積む(成膜) — ウェハの表面に薄い膜を一様に載せる。金属、絶縁体、半導体、いずれも数ナノメートルから数百ナノメートルの厚みで
- 写す(リソグラフィ) — 感光材(レジスト)を塗り、原版の図形を光で焼き付け、現像して「削る場所/残す場所」の型紙を作る
- 削る(エッチング) — 型紙のない場所だけをプラズマで削り落とす
- 整える(洗浄・平坦化) — 削りかすと汚れを落とし、表面を鏡のように平らに戻す
この4つを一巡すると、回路の層が1枚できます。それを配線の階数だけ、数十回から百回近く繰り返す。工程そのものの中身はチップはこう作られるにありますが、ここで押さえるべきは1動作ごとに専用の機械があり、その機械ごとに別の会社がいるということです。
工程と装置メーカーの対応
代表的な対応を並べると、産業の地図はこうなります。
| 工程 | やっていること | 代表的なメーカー |
|---|---|---|
| 成膜(CVD / PVD / ALD / エピ) | 膜を載せる | Applied Materials、Lam Research、東京エレクトロン、ASM International、Kokusai Electric |
| 塗布・現像(コータ/デベロッパ) | レジストを塗り現像する | 東京エレクトロン |
| 露光(EUV / DUV) | 図形を焼き付ける | ASML、キヤノン、ニコン |
| ドライエッチング | 削る | Lam Research、東京エレクトロン、Applied Materials |
| イオン注入 | 不純物を打ち込む | Applied Materials、Axcelis |
| 熱処理・アニール | 打ち込んだ原子を落ち着かせる | 東京エレクトロン、Kokusai Electric、Applied Materials |
| CMP(化学機械研磨) | 表面を平らに削る | Applied Materials、荏原製作所 |
| 洗浄 | 残渣・粒子を落とす | SCREEN、東京エレクトロン、Lam Research |
| 計測・検査 | 正しくできたか見る | KLA、Applied Materials、日立ハイテク |
| 研削・ダイシング | ウェハを薄くし切り分ける | ディスコ |
| テスト | 電気的に良否を判定する | アドバンテスト、Teradyne |
各社が複数の欄にまたがっている点に注目してください。特に成膜とエッチングは、真空チャンバ・プラズマ・ガス供給という土台を共有するので、片方が強い会社はもう片方にも出ています。逆に露光だけは土台がまったく別(超精密光学と機械)で、ここだけ顔ぶれが入れ替わります。
何台要るのか、という現場の算数
ファブの設備計画は、工程ごとに次の割り算を解くことから始まります。
は必要な装置台数、 は月に流すウェハ枚数、 はその工程を1枚のウェハが通る回数(層の数だけ繰り返すので1より大きい)、 は月の稼働時間、 は装置1台が1時間に処理できる枚数、 は稼働率です。要するに「こなすべき延べ枚数 ÷ 1台がこなせる枚数」でしかありません。
この式が装置産業の形を説明します。洗浄は が極端に大きい——ほぼすべての工程の前後に挟まるので、台数が最も多くなる。露光は が中程度でも が低く単価が桁違いなので、台数は少ないのに投資額では最大になり、そしてボトルネックになる。工場の生産能力が「EUVを何台持っているか」で語られるのは、この割り算の結果です。
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