JA EN
体系サプライチェーン
·★ 会員·11分で読めます

製造装置メーカーの世界 — ASML・AMAT・TEL・Lamは何を作っているか

チップ製造は「積む・写す・削る・洗う」の反復で、その1動作ずつに専用の機械と専門メーカーがいる。工程と装置の対応を整理したうえで、必要台数の式と開発費の式から「なぜ装置産業は数社に固まるのか」を導き、ASMLのEUV独占が単独ではなく部品メーカーの束として成立している構造まで解説する。

対象textタスクhardware

印刷所ではなく、印刷機を作る側の話

チップは彫るのではなく印刷されます。ならば工場(ファウンドリ)は印刷所です。ではその印刷機は誰が作っているのか——これがこの記事の主題です。

普通の産業なら、工場のほうが機械より目立ちます。半導体は逆で、機械のほうが高く、機械のほうが技術の限界を決めています。最先端の露光装置は1台で1億ドルを超え、ジャンボジェット数機分の部品点数を持ち、輸送に専用の貨物便が要る。工場が「どこまで細かく作れるか」は、その年に手に入る装置の性能で頭打ちになります。設計図が先にあっても、それを写せる機械がなければ何も生まれない。 半導体産業の主導権が装置メーカーに集まっているのは、この一点に尽きます。

チェーン全体のどこに誰がいるかは半導体サプライチェーン全体地図で描いたので、ここではその一段だけを拡大します。

ウェハが受けるのは、たった4種類の動作

数百工程と聞くと数百種類の作業がありそうですが、実際に起きているのは4動作の反復です。

この4つを一巡すると、回路の層が1枚できます。それを配線の階数だけ、数十回から百回近く繰り返す。工程そのものの中身はチップはこう作られるにありますが、ここで押さえるべきは1動作ごとに専用の機械があり、その機械ごとに別の会社がいるということです。

工程と装置メーカーの対応

代表的な対応を並べると、産業の地図はこうなります。

工程 やっていること 代表的なメーカー
成膜(CVD / PVD / ALD / エピ) 膜を載せる Applied Materials、Lam Research、東京エレクトロン、ASM International、Kokusai Electric
塗布・現像(コータ/デベロッパ) レジストを塗り現像する 東京エレクトロン
露光(EUV / DUV) 図形を焼き付ける ASML、キヤノン、ニコン
ドライエッチング 削る Lam Research、東京エレクトロン、Applied Materials
イオン注入 不純物を打ち込む Applied Materials、Axcelis
熱処理・アニール 打ち込んだ原子を落ち着かせる 東京エレクトロン、Kokusai Electric、Applied Materials
CMP(化学機械研磨) 表面を平らに削る Applied Materials、荏原製作所
洗浄 残渣・粒子を落とす SCREEN、東京エレクトロン、Lam Research
計測・検査 正しくできたか見る KLA、Applied Materials、日立ハイテク
研削・ダイシング ウェハを薄くし切り分ける ディスコ
テスト 電気的に良否を判定する アドバンテスト、Teradyne

各社が複数の欄にまたがっている点に注目してください。特に成膜とエッチングは、真空チャンバ・プラズマ・ガス供給という土台を共有するので、片方が強い会社はもう片方にも出ています。逆に露光だけは土台がまったく別(超精密光学と機械)で、ここだけ顔ぶれが入れ替わります。

何台要るのか、という現場の算数

ファブの設備計画は、工程ごとに次の割り算を解くことから始まります。

M=W×nH×WPH×UM = \frac{W \times n}{H \times \mathrm{WPH} \times U}
(1)

MM は必要な装置台数、WW は月に流すウェハ枚数、nn はその工程を1枚のウェハが通る回数(層の数だけ繰り返すので1より大きい)、HH は月の稼働時間、WPH\mathrm{WPH} は装置1台が1時間に処理できる枚数、UU は稼働率です。要するに「こなすべき延べ枚数 ÷ 1台がこなせる枚数」でしかありません。

この式が装置産業の形を説明します。洗浄は nn が極端に大きい——ほぼすべての工程の前後に挟まるので、台数が最も多くなる。露光は nn が中程度でも WPH\mathrm{WPH} が低く単価が桁違いなので、台数は少ないのに投資額では最大になり、そしてボトルネックになる。工場の生産能力が「EUVを何台持っているか」で語られるのは、この割り算の結果です。

FIG 1棒グラフが尖る/平らになる様子。装置産業のシェアはこの「尖った」側にある。温度を参入障壁の低さだと思って下げていくと、分布が1社に集中していく

装置産業がどれも寡占なのは、談合でも陰謀でもなく、次の割り算の帰結です。

この先にあるもの

§

ここから先は会員限定です

解説記事371本・教科書26章・学生モード48単元・論文精読6本が、月額¥490ですべて読み放題になります。新しい解説は毎日3本ずつ増えます。いつでも解約でき、解約後も期間の終わりまで読めます。

会員の方はログインすると続きが表示されます

コメント

コメントにはログインが必要です