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体系情報理論
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相互情報量 — 「知っている」を測る

片方を知ると、もう片方の迷いがどれだけ減るか。それを1つの数字にしたのが相互情報量です。エントロピーの引き算という定義から、条件付き相互情報量・データ処理不等式・推定の難しさを経て、対照学習のInfoNCEがなぜ「相互情報量の下限」と呼ばれるのかまでをつなげます。

対象textタスクmath

Representation Learning with Contrastive Predictive Coding


「知っていると、どれだけ得か」を数字にする

朝、傘を持つか迷っている。そこで「今朝は気圧がぐっと下がってる」と教えられたとします。この一言で、「今日は雨か」という見通しはどれだけはっきりしたでしょうか。

相互情報量(mutual information, MI)は、この「はっきりした分」を数字にした量です。片方を知ると、もう片方についての迷いがどれだけ減るか。減り幅が大きいほど、2つは強く関係している。それだけの話です。

似た役目に相関係数がありますが、あれが測れるのは「直線的に一緒に増えるか」だけです。y=x2y = x^2xx1-1 から 11 を動くとき、相関係数はほぼ0になります。xx が正でも負でも yy は同じように大きくなり、直線としては噛み合わないからです。それでも xx を知れば yy は完全に決まる。相互情報量はこれを「関係は最大限に強い」と正しく答えます。関係の形を問わず、あらゆる依存を拾うのが強みです。

この記事は情報理論とAIの隣に置かれていますが、前提知識は仮定せずに進めます。

比喩: 「20の質問」で、質問1つの値打ちを測る

相手が思い浮かべた単語を、はい/いいえの質問だけで当てるゲーム。候補が1024語なら、あなたの迷いは質問10回分です(210=10242^{10} = 1024 だから)。この「迷いの大きさ」がエントロピーで、単位はビットです。

ここで「それは生き物ですか?」と聞き、候補が256語まで絞れたとします。迷いは10ビットから8ビットへ。この質問には2ビットの値打ちがあったことになります。

相互情報量はまさにこの値打ちです。ただし運良く一発で当たった1回ではなく、答えの出方すべてを確率で重みづけた平均を取ります。「はい」でしか絞れない質問は、「はい」が滅多に返ってこないなら平均するとほとんど値打ちがない。逆に、どちらの答えでも半々に割れる質問は毎回きっちり1ビット稼ぎます。良い質問とは、答えが予測できない質問だというのが、この平均の言っていることです。

仕組み: 相互情報量は「迷いの引き算」

言葉にすれば、相互情報量はただの引き算です。何も知らないときの YY への迷いから、XX を教わった後に残る YY への迷いを引く。差なので必ず0以上になります。教わって平均的に迷いが増えることはありません。そして差が0なら、XXYY について何も語っていない。これが「独立」の情報理論版です。

順に式にしていきます。まず、迷いの大きさ=エントロピーp(x)p(x)XX が値 xx を取る確率です。

H(X)=xp(x)logp(x)H(X) = -\sum_{x} p(x)\log p(x)
(1)

各結果の起こりにくさ logp(x)-\log p(x) を、その結果が起こる確率で平均したもの、という意味です。ありふれた結果ばかりなら小さく、どれが来るか見当もつかないなら大きくなります。対数の底を2にすればビット、自然対数にすればナット(nat)という単位になります。

つまり H(X)H(X) は「XX の出方が平均してどれくらい当てにくいか」と声に出して読める量です。x\sum_x は起こりうる値を全部見て回ること、頭のマイナスは「確率が小さい結果ほど驚きが大きい」と向きを揃えるための符号にすぎません。

次に、XX を知った後に残る迷い=条件付きエントロピーです。

H(YX)=xp(x)H(YX=x)H(Y \mid X) = \sum_{x} p(x)\, H(Y \mid X = x)
(2)

XXxx だと分かった世界での YY の迷い」を、それぞれの xx が起きる確率で平均したものです。XX を知るほど YY が絞れるなら、この値は小さくなります。

つまり縦棒 \mid は「〜を教わった後で」と読み、H(YX)H(Y \mid X) は「XX を教わってもなお残っている、YY への迷い」ということです。

相互情報量は、この2つの差として定義されます。

I(X;Y)=H(Y)H(YX)=H(X)H(XY)I(X; Y) = H(Y) - H(Y \mid X) = H(X) - H(X \mid Y)
(3)

つまり「最初に抱えていた迷い」から「教わった後に残った迷い」を引いた、その差し引き分が I(X;Y)I(X;Y) だ、というだけの式です。

等号が2つ並んでいるのは、どちらから見ても同じ値になるという主張です。「XXYY について教えてくれる量」と「YYXX について教えてくれる量」は常に等しい。直感には反しますが定義から従う性質で、だから mutual(相互)情報量と呼ばれます。

分布が尖っていれば迷いは小さく、平らなら大きい。この対応を手で動かして確かめておくと、以降がずっと楽になります。

FIG 1温度を下げると棒グラフが1本に尖り、上げると平らになる。尖った状態が「もう答えがほぼ分かっている=エントロピーが小さい」、平らな状態が「まだ何も分からない」。相互情報量は、Xを教わったことでこの棒がどれだけ尖るかの平均です

ここまでは引き算で定義しました。同じ量を、別の角度から書き直せます。

この先にあるもの

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参考文献

  1. Representation Learning with Contrastive Predictive Coding. arXiv:1807.03748論文ページ·PDF
  2. MINE: Mutual Information Neural Estimation. arXiv:1801.04062論文ページ·PDF
  3. On Variational Bounds of Mutual Information. arXiv:1905.06922論文ページ·PDF
  4. On Mutual Information Maximization for Representation Learning. arXiv:1907.13625論文ページ·PDF

本記事は上記論文の本文にもとづいて執筆しています。数値・主張は原典を優先してください。

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