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論文精読 › GPU・ハードウェア

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Attentionこそが全て

Attention Is All You Need

難度★★ 目安40分 原論文arXiv:1706.03762 PDF 2017-06-12
この論文を読むと現在のLLM・画像生成・音声モデルがほぼ全て土台にしているアーキテクチャの原文を、そのまま読み切れるようになる。「なぜ√d_kで割るのか」「なぜヘッドを分けるのか」といった、実装や高速化の議論で毎回前提にされる設計理由を、二次情報ではなく著者の言葉で押さえられる。
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Abstract要旨

The dominant sequence transduction models are based on complex recurrent or convolutional neural networks that include an encoder and a decoder. The best performing models also connect the encoder and decoder through an attention mechanism.

系列変換モデルの主流は、エンコーダとデコーダを備えた複雑な再帰型または畳み込み型のニューラルネットワークである。最も性能の良いモデルは、さらにエンコーダとデコーダをattention機構で結んでいる。

論文のAbstractは「既存はこうだ」から始まるのが定型。dominant は「支配的な=主流の」で、good/popular とは違い『いま一番使われている』という事実の指摘に留める語。ここではまだ批判していない点に注目。次の文の The best performing models also … が「一番強いやつでさえ attention を“付け足し”で使っているだけだ」という伏線になっている。

sequence transduction系列変換

系列を入力して別の系列を出す問題。翻訳が代表例

dominant主流の

その分野で現在いちばん使われている、の意。冒頭で既存手法を一言でまとめるときの定番語

We propose a new simple network architecture, the Transformer, based solely on attention mechanisms, dispensing with recurrence and convolutions entirely.

本稿では、attention機構のみに基づく新しい単純なネットワーク構造、Transformerを提案する。再帰も畳み込みも完全に取り払う。

この論文で最も重要な一文。主張は We propose … で始まり、new simple の simple が効いている(複雑さで勝つのではなく捨てて勝つ、という宣言)。solely(〜だけに基づく)と entirely(完全に)で二重に「例外なし」を強調しているのがタイトル Attention Is All You Need と対応する。dispense with は「〜なしで済ませる」で、remove より「そもそも要らない」というニュアンスが強い。

dispense with〜なしで済ませる

取り除くというより「そもそも不要にする」。論文で既存部品を捨てるときの定番表現

solelyもっぱら〜のみ

only の硬い言い方。論文では「例外なく」を強調したいときに使う

Experiments on two machine translation tasks show these models to be superior in quality while being more parallelizable and requiring significantly less time to train.

2つの機械翻訳タスクでの実験により、これらのモデルが品質で優れ、しかも並列化しやすく、学習時間が大幅に短いことが示された。

show X to be Y は「XがYであることを示す」という論文頻出の構文。ここで注意すべきは while 以下で、著者は精度だけでなく『並列化のしやすさ』と『学習時間』を同格の成果として並べている。つまりこの論文はモデル論文であると同時に計算資源の論文でもある——GPUの使い方が変わった、という後の歴史はこの一文に含意されている。

parallelizable並列化可能な

計算を同時に走らせられる性質。GPUで速く回せるかを決める

Our model achieves 28.4 BLEU on the WMT 2014 English-to-German translation task, improving over the existing best results, including ensembles, by over 2 BLEU.

本モデルはWMT 2014の英独翻訳タスクで28.4 BLEUを達成し、アンサンブルを含む既存の最高結果を2 BLEU以上上回った。

improving over … by over 2 BLEU の by は差分を表す by(「2ポイント分」)。including ensembles をわざわざ挿入しているのは、単一モデルが複数モデルの合議にまで勝った、という強い主張のため。翻訳の世界で2 BLEUは大差で、著者はそれを知っている読者に向けてこの数字だけを置いている。

ensembleアンサンブル

複数モデルの出力を合議させて精度を上げる手法。単一モデルより有利なのが普通

前提知識 — そもそも BLEU とは(数字の読み方が分からない人向け)

BLEUは機械翻訳の品質を自動で測る指標で、0〜100のスコア。人間の参考訳とどれだけ同じ語の並びが出てくるかで決まる。絶対値そのものより「同じテストセット上での他モデルとの差」を見るのが正しい読み方で、この論文が比べているWMT 2014 newstest2014では1ポイントの差でも改善として報告される。したがって本文の『2 BLEU以上』は小さな上積みではなく、当時としては明確な飛躍を指している。なお本文が挙げるスコアはすべて同一のテストセット上の値なので横並びで比較してよい。

On the WMT 2014 English-to-French translation task, our model establishes a new single-model state-of-the-art BLEU score of 41.8 after training for 3.5 days on eight GPUs, a small fraction of the training costs of the best models from the literature.

WMT 2014の英仏翻訳タスクでは、8基のGPUで3.5日学習した後、単一モデルとしての新たな最高スコア41.8 BLEUを打ち立てた。これは文献中の最良モデルの学習コストのごく一部にすぎない。

establishes a new … state-of-the-art は「新記録を打ち立てる」の完全な定型句。読み飛ばしてよい。むしろ精読すべきは後半 a small fraction of the training costs で、これは直前の名詞句全体を言い換える同格表現(「3.5日×8GPU、それは既存の学習コストのごく一部だ」)。single-model と限定を付けている点も見落とさないこと——アンサンブルは含まない、という自己抑制。なお本文6.1では同じ英仏の結果が41.0と書かれており、Abstractおよび表2の41.8と食い違う(原論文のまま)。

state-of-the-art最高水準(SOTA)

その時点での最良の結果。論文では名詞にも形容詞にも使う

a small fraction of〜のごく一部

「桁違いに少ない」を上品に言う表現。コスト比較の定番

We show that the Transformer generalizes well to other tasks by applying it successfully to English constituency parsing both with large and limited training data.

さらにTransformerが他のタスクにもよく一般化することを、英語の構文解析に——大規模データでも限られたデータでも——適用して成功させることで示す。

generalize well to は「〜にもうまく通用する」。翻訳専用の道具ではないと言いたい一文で、実際この主張が後年あらゆる分野への転用を正当化した。both with large and limited training data という但し書きが重要で、『データが少ないと弱い』という当時のRNN系への批判(本文6.3で明言される)を先回りして潰している。

constituency parsing句構造解析

文を句のまとまりの木構造に分解するタスク。出力が入力より長い点で翻訳と性質が違う

1 Introduction / 2 Background導入と背景

前提知識 — そもそも RNN とは(前提知識がない人だけ開く)

RNN(再帰型ニューラルネットワーク)は、系列を1語ずつ順番に読み、その都度「隠れ状態」と呼ばれる内部メモリを更新していくモデル。t番目の状態は t-1番目の状態から計算されるので、原理的に前の語の計算が終わるまで次の語の計算を始められない。LSTMやGRUはこの隠れ状態の更新式を工夫して長期記憶を保ちやすくした改良版で、この論文が書かれた2017年時点では系列モデリングの標準だった。以降の本文で「sequential nature(逐次性)」と呼ばれているのは、この“1語ずつしか進めない”性質のことを指す。

Recurrent models typically factor computation along the symbol positions of the input and output sequences. Aligning the positions to steps in computation time, they generate a sequence of hidden states h_t, as a function of the previous hidden state h_{t-1} and the input for position t.

再帰型モデルは通常、計算を入力列・出力列の記号位置に沿って分解する。位置を計算のタイムステップに対応させ、直前の隠れ状態 h_{t-1} と位置 t の入力の関数として、隠れ状態の列 h_t を生成していく。

factor computation along … は「計算を〜に沿って分解する」。数学の因数分解 factor がそのまま動詞で使われている、論文特有の言い回し。Aligning the positions to steps in computation time(語の位置=計算の時刻に揃える)が、次段落の批判の核心を先に定義している——つまり著者は「位置と時間を同一視したこと」自体を問題にしていく。

hidden state隠れ状態

モデルが系列を読みながら持ち回る内部メモリ

This inherently sequential nature precludes parallelization within training examples, which becomes critical at longer sequence lengths, as memory constraints limit batching across examples.

この本質的に逐次的な性質が、1つの学習事例の内部での並列化を妨げる。系列が長くなるほどこれは深刻になる。メモリの制約によって、事例をまたいでバッチにまとめることにも限界があるからだ。

この論文で最も重要な問題提起の一文。preclude は prevent より硬く「原理的に排除する」の意で、工夫すれば直る話ではないという含み。within training examples(1文の内部で)と across examples(複数の文をまたいで)の対比が肝で、「文の中で並列化できない分を、たくさんの文を同時に流して埋めればいい」という当然の反論を、as以下のメモリ制約で先に封じている。GPUを埋められないという、ハードウェア側の論点。

preclude妨げる、排除する

原理的に不可能にする、という強い否定。prevent より硬い

batchingバッチ化

複数の事例をまとめて一度に計算し、GPUを埋める手法

Attention mechanisms have become an integral part of compelling sequence modeling and transduction models in various tasks, allowing modeling of dependencies without regard to their distance in the input or output sequences [2, 19]. In all but a few cases [27], however, such attention mechanisms are used in conjunction with a recurrent network.

attention機構は、さまざまなタスクで有力な系列モデリング・系列変換モデルに欠かせない要素となっており、入力列・出力列における距離に関係なく依存関係をモデル化できる。しかし、ごく一部の例外を除けば、そうしたattention機構は再帰型ネットワークと併用されている。

however の位置が読みどころ。前半でattentionを褒めておいて、後半で「でもみんなRNNと“一緒に”使っている」と落とす。in conjunction with(〜と併用して)が批判の的で、著者は次の段落で『併用をやめる』と宣言する。In all but a few cases は「ごく少数の例を除きすべて」=ほぼ全部、の言い方で、all but は「〜以外すべて」。not all と読み違えないこと。

in conjunction with〜と併用して

組み合わせて使う。ここでは「独立して使われていない」ことの指摘

all but a fewごく一部を除いて全部

all but X は「X以外すべて」。否定と読み違えやすい頻出表現

In this work we propose the Transformer, a model architecture eschewing recurrence and instead relying entirely on an attention mechanism to draw global dependencies between input and output. The Transformer allows for significantly more parallelization and can reach a new state of the art in translation quality after being trained for as little as twelve hours on eight P100 GPUs.

本研究では、再帰を捨て、代わりに入力と出力の間の大域的な依存関係を引き出すためにattention機構のみに全面的に依拠するモデル構造、Transformerを提案する。Transformerは並列化を大幅に進められ、8基のP100 GPUでわずか12時間学習しただけで、翻訳品質の新たな最高水準に到達できる。

In this work we propose … は貢献を述べる決まり文句で、Introductionの最後に必ず来る。ここを見つければ論文の主張が1文で取れる。eschew(避ける、捨てる)はやや文語的な語で、Abstractの dispense with の言い換え。as little as twelve hours は「たったの12時間」で、as little as は数値を小さく見せる強調表現——著者が計算コストを売りにしていることがここでも分かる。

eschew(意図的に)避ける

文語的に「使わないことにする」。avoid より選択の意志が強い

global dependencies大域的な依存関係

文の端と端のように、離れた位置どうしの関係

Self-attention, sometimes called intra-attention is an attention mechanism relating different positions of a single sequence in order to compute a representation of the sequence.

self-attention(自己注意)は、intra-attentionとも呼ばれ、単一の系列内の異なる位置どうしを関係づけて、その系列の表現を計算するattention機構である。

この論文における self-attention の定義文。a single sequence(1つの系列の中で)が、翻訳の原文と訳文のような2つの系列をまたぐ従来のattentionとの違い。定義を述べる文では is が主動詞になるので、長い挿入(sometimes called intra-attention)を飛ばして骨格 Self-attention … is an attention mechanism relating … を取る読み方が有効。

self-attention自己注意

同じ系列の中の位置どうしを関係づけるattention。Transformerの中核

representation表現

モデル内部でのベクトル表現。「意味を数値にしたもの」の意で論文中に頻出

To the best of our knowledge, however, the Transformer is the first transduction model relying entirely on self-attention to compute representations of its input and output without using sequence-aligned RNNs or convolution.

しかし我々の知る限り、Transformerは、系列に沿ったRNNや畳み込みを使わずに、入力と出力の表現の計算を完全にself-attentionのみに依拠する初めての系列変換モデルである。

To the best of our knowledge(我々の知る限り)は新規性を主張するときの保険つき定型句。「初めてだ」と断言せず、後から先行研究が出ても嘘にならないようにする作法なので、論文を書く側になったときにも使う。the first … relying entirely on … without using … と、肯定(entirely)と否定(without)で新規性の範囲を厳密に切っている点を追うこと。

to the best of our knowledge我々の知る限り

新規性を主張するときの定型。断言を避けつつ「初」と言う作法

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