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論文解説: Retrieval-Augmented Skill Optimization via Cross-Harness Adaptation — 他人のスキルを借り、自分の環境の言葉に書き直す

エージェントの手順書(スキル)を、公開済みスキルの山から検索し、対象の実行環境の語彙に書き直してから使う RASO。試行ゼロの初期化と、失敗から引く更新の2段で、検索なしの最適化手法を4ベンチマーク・2モデルで上回ったと報告する論文を1から解説する。

要点

  • エージェントスキルは、ハーネスの下でタスクをうまくこなせるよう導く、再利用可能で実行に移せる自然言語の成果物である。
  • 既存の最適化手法は公開スキルが数百万規模あるのにほぼ使わず、コストの高いロールアウトだけでスキルを磨いている。
  • RASOは外部スキルコーパスを事前知識とし、Cross-Harness Adaptationで領域とハーネスのずれを吸収して書き直す。
  • RASIは試行なしで初期スキルを作り、RASUは実行結果のフィードバックを手がかりに外部知識を検索して繰り返し改良する。
  • 4つのエージェントベンチマークと2つのモデルで、検索を使った初期化・更新を持たない比較手法を一貫して上回った。
対象textタスクrag

Retrieval-Augmented Skill Optimization via Cross-Harness Adaptation

一次資料 — この記事の根拠

論文の発表 2026-09-29→この解説の公開 2026-10-06同月

Retrieval-Augmented Skill Optimization via Cross-Harness AdaptationJaewon Chu, Ji Soo Lee, Jihwan Park ほか · 2026-09-29 · v1arXiv:2609.38024論文ページ·PDF
原文の要旨(Abstract)を読む

An agent skill is a reusable, actionable natural-language artifact that guides an agent to perform a task effectively under a given harness. Recent studies have explored the optimization of agent skills, contributing to a growing collection of publicly available skills spanning diverse tasks, domains, and harnesses. Despite millions of publicly shared skills, existing skill optimization methods largely overlook this accumulated knowledge, instead relying solely on expensive agent rollouts to iteratively refine skills for a target task. To address this, we propose \textbf{Retrieval-Augmented Skill Optimization (RASO)}, a framework that leverages an external skill corpus as prior knowledge throughout skill optimization. RASO retrieves relevant knowledge from existing skills and adapts it to the target task and harness via Cross-Harness Adaptation, accounting for mismatches in both domain and harness. RASO comprises two complementary stages: \textbf{Retrieval-Augmented Skill Initialization (RASI)} constructs a knowledge-grounded initial skill without requiring agent rollouts, while \textbf{Retrieval-Augmented Skill Update (RASU)} iteratively refines the skill by retrieving external knowledge guided by execution feedback. Across four agent benchmarks and two models, extensive experiments show that RASO consistently outperforms baselines without retrieval-augmented skill initialization and updating.


料理本の山と、自分の台所

新しい料理を任されたら、まず誰かのレシピを探します。ただしそれはオーブン前提かもしれない。だから「オーブンで20分」を「フライパンで蓋をして弱火」に読み替え、手元の道具の言葉で書き直してから作ります。

本稿で扱う論文 "Retrieval-Augmented Skill Optimization via Cross-Harness Adaptation"(Chu ほか、KAIST・Korea University・Meta AI、arXiv:2609.38024、2026年9月29日公開)は、この「探して、読み替えて、書き直す」をAIエージェントのスキル作りに持ち込んだ研究です。

まず abstract の要約です。エージェントスキルとは、ある実行環境(ハーネス)の下でエージェントがタスクをうまくこなせるように導く、再利用可能で実行に移せる自然言語の成果物を指します。スキル最適化の研究が進んだ結果、多様なタスク・領域・ハーネスにまたがる公開スキルが数百万規模で共有されるようになりました。それなのに既存の最適化手法はこの蓄積をほぼ使わず、コストの高いエージェント試行(ロールアウト)だけで対象タスク向けのスキルを磨いています。そこで著者らは、外部のスキルコーパスを事前知識として最適化の全工程で使う RASO(Retrieval-Augmented Skill Optimization) を提案します。RASO は既存スキルから関連知識を検索し、Cross-Harness Adaptation(ハーネス横断の適応)によって領域とハーネスのずれを吸収しながら、対象タスクとハーネスに合わせて書き直します。構成は2段で、RASI は試行なしで知識に裏づけられた初期スキルを作り、RASU は実行結果のフィードバックを手がかりに外部知識を検索してスキルを繰り返し改良します。4つのエージェントベンチマークと2つのモデルで、検索を使った初期化・更新を持たない比較手法を一貫して上回ったと報告しています。

そもそも「スキル」と「ハーネス」とは

LLM エージェントは、使えるツール、触れるファイル、採点方法を決める実行ハーネスの中で動きます(§1)。成績はモデルの知識だけでなく、「この環境でどの順番に何をするか」という手続きにも左右されます。それを自然言語で書いたものがスキルです。文章なので人が監査でき、モデルを替えても持ち運べる、と論文は位置づけています(§1)。

問題は、既存の自動最適化手法(TextGrad、GEPA、SkillOpt、WikiSkill など)が、ほぼ自分の試行結果だけから学ぶ点です(§2)。試行は高くつき、自分の失敗から推測できる範囲の外には届きません。一方、公開スキルは大量にありますが、別の領域・別のハーネス向けです。図1によれば、SpreadsheetBench で検索されたスキルの 92.9% が別ハーネス由来でした。他人のレシピには読み替えが欠かせません。

問題設定を式で書く

論文は最適化を次のように定めます(§3)。

s⋆=arg⁡max⁡s Ex∼Dval[r(h(M,x,s))]s^{\star}=\arg\max_{s}\ \mathbb{E}_{x\sim\mathcal{D}_{\mathrm{val}}}\left[r\left(h(\mathcal{M},x,s)\right)\right]
(1)

M\mathcal{M} は固定された言語モデル、hh はハーネス、xx は1つのタスク、ss はスキル(文章)です。h(M,x,s)h(\mathcal{M},x,s) は「モデルにスキルを持たせて環境で走らせた軌跡」、rr はそれを0〜1で採点する関数です。平易に言うと、モデルも環境も変えず、渡す手順書の文章だけを動かして、検証用タスクの平均点が最も高い手順書を選ぶという問題です。この論文の特徴は、最初の手順書を作る工程(初期化)も最適化の一部に含めた点にあります。

FIG 1クエリに近い上位K件の顔ぶれは、測り方とKで変わる。RASOはBM25(単語の一致)で各クエリにつきK=5件の「節」を取る

RASO の共通部品は2つです。…

この先にあるもの

§

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参考文献

  1. Jaewon Chu, Ji Soo Lee, Jihwan Park, Dohwan Ko et al.. (2026-09-29) Retrieval-Augmented Skill Optimization via Cross-Harness Adaptation. arXiv:2609.38024論文ページ·PDF

本記事は上記論文の本文にもとづいて執筆しています。数値・主張は原典を優先してください。

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